Jintrick.netagenda2008年10月アーカイブ → 2008年10月08日

マルチカラムとウェブ・ユーザビリティ

ウェブページの文章を読むときは「上から下へリニアに」というスタイルが一般的というか、恐らく99.9%がそうだと思う。マルチカラムで読んだ人がその慣性から引き剥がされて不快感を覚えたとしても不思議はない。視線を下への移動だけでなく上にも移動させるという、いつもと違うことをしなければならないというのは、それだけでユーザビリティ的に問題を引き起こす要因となり得るだろう。しかし、必要な「技術」は視線を移動させることだけだ。スクロールは必要ないし、マウス操作も必要ない。マルチカラムに関して生じているウェブ・ユーザビリティ的問題は、結局のところ主観的満足度の低下だけだと私は想像している。私が主観的満足度よりも重視しているのは視線の移動を失敗したりせずに「内容をきちんと読めたか」、そして「どのくらいのスピードで読めたか」。この2点。もともとスクロールが発生しないほどの短い文章ではマルチカラムが敗北するが、マルチカラムがスクロールの発生を抑えるケースにおいてこの2点がどうなるのか、そこはテストしてみなければわからない。ひょっとしたら本来去ってしまったはずのスクロール嫌いな、あるいは長文嫌いなユーザを、文章の最後まで繋ぎとめることができたかもしれない

マルチカラムにすると文章が少し短く見える

次の画像は、WXGA程度のモニタで1,200字程度の記事を1カラムで表示したものだ。折り返しの文字数は適度に調節してあるものとする。暗い部分はスクロールしなければ読めず、概要をつかむのには不向きだ。

1カラムで長文記事を表示した例
一画面分ではおさまらず、スクロールを要する

一方次の画像は、条件を同じにして3カラムで表示したものだ。必要なスペースはおよそ半分、一画面分に収まる。見出しや強調語句などが適度に散らばっているならば、全体の概要や意図をつかむのも容易になっている。

3カラムで長文記事を表示した例
ちょうど一画面分に収まっている

ちなみにこのサイトでは、ちょうど一画面分に収まるケースでのみマルチカラムになるように、という意図で(超適当な)Firefox3用のスクリプトを走らせているが、Fx側にバグだのなんだのがあるせいで全然私の理想とは違うので悪しからず。

マルチカラムの障害って実際どれくらいあるんだろう?

また、視線のリニアな移動という慣性から引き剥がされたときに不快感を覚える人の割合がどれくらいかもテストしてみなければわからないことだ。「私には読みづらい」という意見も貴重だが、きちんとしたデータが欲しい。マルチカラムは読みづらいから読むのを止めたとか、読むのを途中で諦めたといったケースがあるかどうかも調べたい。また、文章だけではなく画像や表を使った分析を行う文書で、文書内に散らばった画像や表をスクロールしなければ比較できない場合に比べて、マルチカラムではどれくらい比較しやすくなり、またどんな弊害があるかも調べておきたい。


ところで、ウェブデザインとは何かについて全然定義を異にしている人がagendaを読んで野次ったりしても、全くの時間の無駄だと思うぞ。少なくともハイパーテキスト原論みたいな、基本的な書物には目を通してからにしてもらいたい(本でも論文でもなんでもいい)。ハイパーテキストの内容と全然関係のない綺麗な女の子のイラストを背景に使ったり、Photoshopで作ったキラキラ光るボタンやロゴで飾るのも、まあ立派なデザインだよ。それを眺めて「すげー」「イケてる!」と感激するのも良い。でもここではそんな話はしていないのよ。


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公開: 2008年10月08日
カテゴリ: ウェブデザイン ,ユーザビリティ ,リキッドマルチカラム