Jintrick.netagenda2008年10月アーカイブ → 2008年10月14日

再びウェブ・マルチカラムに対する疑問等に応える

ヘルプにも書いて居る通り、640 × 480 を想定して居るうちのサイトではマルチカラムは採用出来ないなあ。

制作者の決断 - Weblogより

マルチカラムとウェブ・ユーザビリティ (agenda)を読んだだけだとしたらある意味誤解も仕方ないのだが、私が採用を検討しているのはリキッドマルチカラムであり、解像度に応じて適当にカラム数が変化するものだ。単純化して説明すると、たとえばカラムの幅を40emに指定したとしよう。ryu氏のいうVGA(640 × 480px)という解像度では、40emの幅をもつカラムを二列並べることができない(※)ため、自動的にシングルカラムになる。こういった性質がある。逆に40emの幅を持つカラムを3つ並べることのできる画面解像度であったなら、3カラムになりうる。

※ 文字サイズにもよる


それはさておき、VGA以下のようなマルチカラムに適さない環境でも無理やりマルチカラムになってしまったら、幅固定のフローズンレイアウトと何ら違いはなく、そんなものウェブデザインとは言えないよ。floatプロパティを使った疑似段組だって、みんな他に適当な方法がなかったから仕方なくやっているだけだろう? 違うのか? 私は昔から嫌々使っていたよ。floatさせる要素には幅を明示しなければならない。「なんだそりゃ」と。display: inline-block等を利用した疑似段組、つまりブロック(カラム)が折り返される疑似段組みの方が遥かに柔軟性の高いレイアウトだ。floatを用いた方法は、明らかに不適切な幅であっても、その不適切なレイアウトを維持してしまう。偶々現在、agendaのホームページではその二つの疑似段組を使っている。Opera9.xやFirefox2/3、safariなんかで見てみるといい。ウィンドウ幅をどんどん縮めていったとき、それぞれのカラムがどんな風に変化するかを比較できるだろう。「最新記事一覧」と「人気記事一覧」の二つはfloatを使っているからウィンドウ幅が狭くなってもいつまでも不適切にレイアウトを保持するのに対し、下部の「月別アーカイブ」は、各カラムがウィンドウ幅に応じて適切に折り返される。さらにFirefox2/3なら中段の「カテゴリ別アーカイブ」の部分にリキッドマルチカラムも使っているので、色々なリキッドレイアウトの挙動を比較することができるようになっている。

どちらかといふと、マルチカラム*1の様なユーザインターフェイス*2的な仕組みは、制作者が提供する物ではないと思ふ。

気に入ったインターフェイスを使ひ回せれば一番なのに - 雑念雑記はてな出張所より

正直、言いたいことは分かるのだが、ユーザーインターフェイス(UI)というのはユーザの入力に対して何らかの出力があったとき、その架け橋となるものだろう。私はUIという言葉をそのような意味で使っていて、ハイパーテキストにおけるGUIについて否定的な意見を述べたりしているので、この単語を正しく使うことは極めて重要だ。揚げ足取りだとは分かっているが、看過できない。インターフェイスについても同様。

風呂敷を小さくして「コンテンツの読ませ方」「コンテンツのレイアウト」あるいは、それより少し風呂敷を広げて「コンテンツのデザイン」としてみよう。結論だけ述べれば、コンテンツのデザインはまず、そのコンテンツをよく知る製作者が提供すべき。そしてそれを上書き可能な形でユーザースタイルシートやユーザースクリプト、あるいはブラウザによる設定変更等が存在して良い。この順序が一ミリでも狂ったら、ウェブは最悪に味気ないものと化す。

実際にウェブでマルチカラム(疑似段組ではなく、CSS3 multicolのようなカラムボックスをコンテンツが跨ぐもの)をやってみると分かると思うが、マルチカラムに適したコンテンツと、全く適さないコンテンツがある。カラム幅を何emに指定すればよいかなど細かい部分もあり、デザインの適切な選択ができるのは、そのコンテンツをよく知る人間である。

繰り返しになるが、HTMLのコンテンツというのは文章だけではない。マルチメディアコンテンツかも知れない。仮に文章であったとしてもだよ。ちゃんとひとつづりの読み物になっているのかさえ不明なんだよ。私は自分の想像力が足りていないことを知っている。本当はまだまだコンテンツは多様性に富んでいる筈だ。コンテンツのデザインは、そのコンテンツがなんであるかを知っている人間にしかできないものだ。だからリキッドマルチカラムを採用するかその他のリキッドレイアウトを採用するかというのは、コンテンツの性質をよく知るデザイナの判断で決めるべきことだ。その上で、ユーザスタイルシートなり、なんなりがある。

参考文献等

私の意図を正しく理解したいと思って下さる方は、先日リキッドマルチカラムというカテゴリを新たに設けたので、目を通してもらいたい。それとCSS3 module: Multi-column layoutはW3C草案だが、一通り目を通しておかないと訳が分からないと思う。英語が嫌なら私が自分のために訳したもの(CSS3 モジュール: マルチカラムレイアウト仕様書邦訳)があるので、参考程度にはできるだろう。さすがに訳してはいないがwww-style@w3.org Mail Archivesでタイトルに[css3-multicol]を含むポストも参考になる。


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公開: 2008年10月14日
カテゴリ: ウェブデザイン ,リキッドマルチカラム ,意見交換, 批判等