Jintrick.netagenda2008年10月アーカイブ → 2008年10月12日

横書きのマルチカラムと横スクロール

横スクロールについては何カ月か前に考察した。その一部分を公開しておく。

横書きの文書の場合、十分に小さな量の縦スクロールによって新たな一行が表示される。誰もが「体で」知っていることだろう。この十分に小さな量の縦スクロールがユーザにきちんとフィードバックされる、つまりユーザはスクロールを細かく操作している感覚を持つことができる。

一方横書き文書のマルチカラムの新しいカラムボックスがインライン方向にどんどん追加されていく場合、それを横スクロールで表示しようとすると、十分に小さな量の横スクロールは、意味のあるフィードバックをユーザに返さない。つまり、「新しい行」ではなく、「各行の新しい一文字」が表示されることになる。したがってこの場合、ユーザにとって意味のある最小量の横スクロールは、カラムボックスの幅と同じである(正確にはカラムボックス+カラムギャップ+カラムボーダー幅)。次の画像は、以前横スクロールのマルチカラム文書を試してみたときのスクリーンショットである。意味のある横スクロール量が、横スクロールバーという「線」で表わされるものではなく、カラムボックスの幅に応じた「点」であることを理解のこと。

参考画像1. スクロール前のマルチカラム文書
heightプロパティをセットしたマルチカラム。横スクロールバーが出ている。
参考画像2. 少しだけスクロールしたマルチカラム文書 / 意味のあるコンテンツ幅を引き出すには、もう少しスクロールが必要だ
中途半端なスクロール量が、無意味なコンテンツの切れ端を表示させたにとどまる。

この一事をもってしても、単に横スクロールをそのまま採用すべきでないことは明らかだろう。意味のある最小単位のスクロール量が「カラムボックスの幅」だということは、それはもう典型的なスクロールモデルではないことを意味しており、細かいスクロール量を調整するための「スクロールバー」という「線」のUser Interfaceをそのまま採用すべきではないのだ。カラムボックスをインライン方向にどんどん追加していくのならば、User Interfaceを根本から変える必要がある。これがどれだけ大変なコストとなるか。正直想像もできないんだよ。ちなみにこの参考画像の文書は非公開なので探したりしないように。

また、ページ内リンクをアクティブにした際の挙動が縦スクロールのそれと全く違うので、かなりの混乱をもたらすことになるとか、この他横スクロールには地味な問題がまだまだある。しかしマルチカラムと直接関係ないので割愛する。

ウェブ・リキッドマルチカラムのための新しいUIの研究費に1,500万円使えるとかでない限り、私は従来の縦スクロールとマルチカラムの融和を目指すことにするよ。


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公開: 2008年10月12日
カテゴリ: ユーザビリティ ,リキッドマルチカラム