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「人の嫌がることはするな」

「人の嫌がることはするな」……素で言っているのだとしたら、幼稚園児と同レベルの知能と言うより他ない。もちろんそうではないだろう。聞き手(読者)を馬鹿にしているのだ。

例えば幼稚園において、ある子供が他所の子の「おべんとう」を食べてしまったとしたら:

と叱るのが効果的だ。幼稚園児には物事を複雑に考える力を期待できないので、道徳に訴えて説得するしかないからである。

これ一発で破綻する「論理」。もちろんこんなマセたことを言う幼稚園児は居ないけれど(むしろ居ないことを望む)。

少し考えればすぐに分かることだが、いくら人が嫌がったとしても、積極的に行った方が良いことは幾らでもあるし、むしろ行わねばならないことだって多々ある。しかし純粋な道徳としては真実なので、論理で説得する気のない人に良く使われるというわけだ。

主張の中身よりも、「印象」を第一に考えている人たちは、この「人の嫌がることをしてはいけない」を好んで使う。良く考えれば誤謬の塊のような理屈だが、とりあえずこの決め台詞を吐いておけば、深く考えない人たちに「なるほどなあ」と思わせることが出来るからである。

「人の嫌がることはするな」。ウェブでは流し読みをされるのが一般的なので、これは特に効果的だが、同時に、最も気を付けねばならないキーワードでもあると言える。

哀れな応用

「人の嫌がることをするな」は、実際には自分の好かない相手に悪い印象を与える為に用いられることが多い。「人の嫌がることをやっている人間」という印象を与えたいだけなのだ。

笑止なのは、自分がその「人の嫌がること」をやっているという事実に全く気がついていないことである。哀れというより他は無い。


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公開: 2002年11月13日
カテゴリ: misc