文書指向ウェブデザインにおけるハイパーテキスト設計指針

文書指向ウェブデザインは抽象的な概念であるため、ここではハイパーテキストの作成に関して、文書指向ウェブデザインのアプローチに沿った具体的なガイドラインの一例を示す。Jintrick Archives内の全ての文書は、基本的にこのガイドラインに従って作成されている。

フォーマットの選択

現在、未来を通じてできるだけ多くのユーザーエージェントで利用可能なものを選択するようにするべきである。利用可能であるということは即ち、最低でもハイパーリンク(単純リンク)が正しく動作しなければならないことを意味する。W3Cがtext/htmlとしてサーブ可能といっているものにしておけば無難だろう。

HTML4.01が現在最も互換性に優れた文書型であることは動かしようのない事実である。一部のタグの省略が許されているなど、著者が直接編集する場合に適した性質を持つ。

XHTML1.0は、何らかのAPIを通じて生成、処理される文書に適している。

ページの分割

実際には文章量に応じて章や節を独立したハイパーテキスト向けに校正する作業が伴うこともある。しかし大きな文書だからといってそれを細切れに分割してはならない。分割の判断基準について説明する。

一塊の意思または主張として意味を成すと考えられる単位、即ち論理的最小限の文書を一つのハイパーテキストとして作成、公開するのが基本である。例えば長大な論文の場合、可能であれば章あるいは節ごとに個別の文書として作成しリンクで結びつける(邦訳のような原文の構成に従う例外もある)。文書指向的アプローチの根本をなす概念でありながら、「一塊の意思または主張」を具体的に説明することは難しいが、少なくともコンテクスト抜きには意味の分からないものは文書とはいえない。例えばこの節「ページの分割」は「ハイパーテキストのデザインに関するガイドライン」という文脈において初めて意味を持つものであるから一つの文書たりえないが、仮にコンテクストについての説明的なパラグラフがあれば、独立可能となる。

ウェブの「文脈」も重視すべきである。サイトやサイト内の関連文書から独立して存在したとき参照価値があると思われるなら独立させて良いが、そうでなければ再考すべき。独立は、可能だからといってすべきとは限らないのだ。

リンクの設計指針

まずリンクを正しく理解するのは前提であろう。リンクするということは、リソースとリソースとの繋がりを明示するということである。

直接関係のないリソースにリンクしてはならない。記事内容が主であり、その関連文書等は従である。あるリソースにリンクする場合、主たる記事内容から見てそのリソースがどんな役割を持つか、どんな関係があるかは常に注意していなければならない。そして可能であれば、その関係性を明示する。

本文内のリンクを重視し、実効性が変わらないならメタデータとしてのリンクは避ける。

ナビゲーションを提供する。ナビゲーションは、ハイパーテキストにおいては必須の要素であり、link要素などでメタデータ化するのではなく、ハイパーリンクとして人間が利用できる形にし。

ハイパーリンクの設計指針

まずハイパーリンクを正しく理解するのは前提であろう。ハイパーリンクは、始点アンカーと終点アンカーの繋がりを明示して関連づけ、瞬時に参照できるようにしたものである。どのような画面遷移が起こるかはユーザーエージェントに依存しており所謂「ジャンプ」の形式を取るかどうかは分からない。したがって特定の場所にジャンプさせる目的でハイパーリンクをデザインしてはならない。ここでは敢えて挙げないが、この誤解を原因とした――実にさまざまな――ユーザビリティ上、アクセシビリティ上の悲劇が起こる。在る筈の重要なリンクを明示しなかったり、また逆に無い筈のリンクを明示したり、そして明示が不必要なほど関係性の希薄なリンクを明示する、といったことがウェブでは当然のように行なわれているが、ハイパーリンクに対する無理解は原因の小さからぬ一つであろう。

文中でアンカーを用いた自然な形のリンクを心がける。文の中の一部分が関連情報へのアクセスを提供する始点アンカーを形成している所謂「文中リンク」は積極的に利用する。一方、参考文献を文書の最後に列挙するフォーマルな方法は、ハイパーテキストにおいては優先的に行なうべきものでもなく、特に文中リンクを回避するのに用いてはならない。それは瞬時に参照可能であるというハイパーテキストの最も重要な利点に逆行したものであり、ウェブユーザビリティを低下させる。

参照先を的確に表現したリンクテキストを用いる。始点アンカーとなる文字列は、終点アンカーとなる参照先等を文脈に沿って的確に表現したもの、例えば参照先の文書タイトル等でなければならないが、文中リンクなどでそれが難しい場合、HTMLで言えばtitle属性のようなメタ要素で示しても良い。『リンクテキストを考える』にて詳細に検討する。

一般的な単語の意味や定義には文中でリンクしない。そのようなリンク(辞書的なリンク)は文書が主張する内容とは関連性の薄いものになりがちであり、ハイパーテキストの要素のように見えて、実はハイパーテキストの特長を殺すのである。ハイパーリンクはある意味強調表示以上に閲覧者に強く訴えかける。辞書的なリンクは、大して重要でもないのにあたかもそれを参照しなければならないかのように読者をミスリードする。どうしても文中で用語集にリンクしたい場合、HTMLならrel="Glossary"という属性をつけてリンクのタイプを明示し、スタイルを目立たないものに変更することも可能だ。もちろん、用語集や辞書サービスにおいてはそういった辞書的なリンクの山であって然るべきである。なぜならそれが用語集の内容そのものなのだから。

ページ内リンクは避ける。これはHTML限定の話だが、HTMLにおいてid属性やname属性をもった要素を終点アンカーとする場合、そのハイパーリンクは終点アンカーの参照ではなく、その「位置」を指し示すことになるというのが事実上の標準になってしまっている。これはハイパーリンクのセマンティクスとは異なっており、その欠陥はユーザビリティ上の問題として顕在化している。詳しくはNielsenによる指摘『ページ内リンクの使用は避けよう(Jakob Nielsen博士のAlertbox)』を参照のこと。

ライティング

文体、文章構成について言及する。

まず結論を先に持ってくる。これは文書レベルにおいても段落レベルにおいても同様である。文書レベルでは、その文書に何らかの結論があるならば、その結論を簡潔にまとめた段落を冒頭に持ってくる。段落においては、その段落に結論があるならば、一つの文で表現して最初に持ってくるようにする。この時まさにこの段落がそうであるように、冒頭のセンテンスを強調しても良い。これは段落の利点と小見出しの利点を併せ持ったメソッドであり、小見出しに本文がフロートするのと似た効果を持つため画面のスペースを有効に利用でき、かつ自然な文章の流れを作ることが出来る。ただし、見出しの持つ検索性とのトレードオフである点に注意する。

敬体、所謂「ですます体」は極力避ける。特定の人間とのコミュニケーションあるいは不特定多数に対する啓蒙や洗脳、印象操作、そういった、文書の背後にある目的とは切り離して、一塊の意思または主張を表現するという純粋な文書として公開すべきであるというのが、文書指向アプローチである。ですます体は、印象操作等のある種の(意識的、無意識的な)政治的意図の現れに他ならない。また、ですます体は文章の力を奪うことがある。また将来の自分が極めて重要な読者となる可能性がある点も考慮すべきだ。家庭内のネットワークを考えてみる。このネットワーク内で、自分のPCに作成していた自分の文書を家族間で共有化するとしよう。しかし共有することを理由に、文体を変更するだろうか。

箇条書きを有効に使うには以下のような箇条書きの特長を考慮する:

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Published: 2007-10-01 ,Updated: 2007-10-01