Jintrick.netagenda2002年04月アーカイブ → 2002年04月06日

フィクション

20XX年、XMLの時代。ホームページという言葉は、やはりウェブサイトの意味で用いられている。大きく変わったのは、ホームページ作成ソフトは非常に高機能なものが無料で配られるようになったことくらいだろうか。ブラウザが無料なのは当然だが、「ホームページ作成ソフト」も当然無料なのである。

「ホームページ作成ソフト」には、必ず優れたマニュアルが付属しているが、XMLについての説明は一切無い。制作者は、マークアップに関して意識せずとも、XMLコンテンツを公開することができる時代になったのである。

ウェブサイトはどのように様変わりしただろうか。WWWは、個人的なホームページで埋め尽くされていた。ウェブ日記も大流行だ。どういう仕組みになっているのかはさっぱりだが、画期的なコミュニケーション手段が発達している。「個人サイト」のコンテンツは極めて定型的だが、その中でも特に流行っていたのが「ランキング」だ。好きなものランキング、嫌いなものランキング、等々、異様に充実していた。

どうやら「ホームページ作成ソフト」には、それらの「ランキング」を簡単に整形する機能が備わっていることが分かった。しかも半端じゃあない。食べ物、飲み物、自動車、バイク、音楽、その他、選択可能なジャンルは多岐にわたっている。そしてジャンルごとに、整形されるテーブルが、適切なものに自動で設定され、ユーザーは項目を埋めるだけで良いのである。

ここで私は、是非、ソースを見てみたいと思った。ところが、ソース閲覧機能は退化してしまっていて、手作業で、.xmlファイルをテキストエディタに渡す作業を行わねばならなかったのには驚いた。さてソースを見てみると、異常に見難い、複雑なコードがずらりと並んでいて、しかも改行がないという有様。なんとか手作業で見やすいソースにしてみると、どうやらランキング部分には「RML」というXMLが用いられているらしい。タグ名から要素を推測することは難しかったが、意味ごとにしっかりマークアップされている。

ところが一方で、見出し、段落といった基本的な文章構成要素についてはないがしろにされたままだ。span要素にstyle属性を付加されたものが非常に多い。

スタイルシートのサポートは、どのブラウザも万全だ。それもそのはず、少しでもエラーがあると、某団体が大々的に「不使用運動」を起すのだそうだ。しかも何度かその運動でもってブラウザシェアを逆転させることに成功したというから頼もしい。


それから更に数年後、ウェブの辺境で、「ホームページ作成ソフト」をあらゆる面から完全否定し、マークアップの原点を説く者たちが登場する。否定論の中核をなすのは:

「ロボットがRML等を利用してデータを収集、マーケティング用の顧客リストを作成している」


webmaster@jintrick.net
公開: 2002年04月06日
カテゴリ: misc